総合・社会
2018.10.13
北海道地震で火力発電所が被災 全道大停電も、太陽光が活躍
9月6日未明に発生した北海道胆振東部地震で、道内は甚大な被害に見舞われ、大規模な火力発電所が被災、全道が停電するブラックアウトに陥った。しかし、分散型電源の太陽光発電設備は健在で、住宅用太陽光発電設備は非常用電源として活躍した。
震源地である厚真町では道路に亀裂が走り、通行止めが多発。揺れで損壊した家も多数あった。
自宅で被災した厚真町の荒谷梅子さん(84)は、当日の状況について「もう転んだままで、骨も折ってしまった」と話し、「ボランティアの人達が手伝ってくれるから本当にありがたい。涙が出る」との心境を漏らした。
9月13日には、石井啓一国土交通大臣が、被災地の視察を行った。石井大臣は会見で、「被災地の実情を直接確認し、被害の甚大さを改めて実感した」と述べた。
地震で、出力165万㎾、道内最大の苫東厚真火力発電所が緊急停止。北海道の電力需要の半分近くを賄っていただけに、道内295万戸で停電が発生した。
北海道電力は、徐々に電力供給を再開したが、大規模停電からの復旧に2日を要した。苫東厚真火力発電所では設備の損傷や敷地内の液状化が発生し、9月19日に1号機が再稼働したものの、完全復旧は10月中旬となる見込みである。
火力発電所が大きな被害を受けた一方、太陽光発電所の被害はほとんどなかった模様だ。
安平町のメガソーラーは、強い揺れを受けながらも、設備の被害はなかったという。現場を管理する東芝エネルギーシステムズエネルギーアグリゲーション統括部の堀切毅ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク2新設工事現場代理人は、「地震の揺れで作業所が傾き、中はぐちゃぐちゃになった。発電所は全く問題なく、地面の亀裂は多少あるものの、設備自体は稼働している」と胸を張る。
自宅の太陽光発電設備を活用して、停電を乗り切った人もいる。江別市在住の河野行則さん(50)は、自宅の出力3kWの太陽光発電設備を活かした。河野さんは当時の状況について、「いつもは電力系統に電気を流しているが、自立運転に切り替えた。コンセントの使い方を家族に伝え、スマートフォンの充電や冷蔵庫の稼働に利用した」と語った。
札幌市清田区在住の橋本圭弘さん(43)は、経営する理髪店兼自宅に、出力4kWの太陽光発電設備を備えている。橋本さんは自立運転への切り替え方法が分からなかったというが、「施工を行ったサンエコの田口登社長に電話で聞いてやってみると、電気が使えた。携帯電話を充電したり、炊飯器で米を炊いたりした。おにぎりを作り、少しずつ食べながら何とか過ごした」と話す。
道内で太陽光発電設備を設置するサンエコの田口社長は大停電に対して思うところが大きいといい、「太陽光発電がこれほど役立ち、安心につながるものだとは思わなかったとの反響を顧客からもらっている。これまでは節電や投資回収を前面に出しがちだったが、自給自足により、電気が途絶えても大丈夫ということを訴求する必要があると気づかされた」と語った。
今回の災害で、大規模な発電所に依存した電力供給システムの脆さが露呈したが、その一方で、分散型電源である太陽光発電の有効性が示された。現在では、太陽光発電設備で発電した電力の自家消費利用が進み、家や地域ごとに電力を確保できる仕組みが整いつつある。これが普及すれば、災害時の電力供給を補う手段として、太陽光発電が一層活用されるようになるかもしれない。
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