世界最大の太陽光大国 中国の今【後編】
中国では、自然エネルギーの導入量が急増しており、とくに太陽光発電の伸びが著しい。
2017年の太陽光発電の導入量は、世界全体が95GWだったのに対し、中国1国だけで52GWを超えた。中国は今、世界市場の実に50%以上を占める太陽光大国へと変貌を遂げたのだ。
前編では、2017年の導入拡大に寄与した『分散型太陽光発電プロジェクト』を紹介したが、もう一度、制度の仕組みを抑えておこう。
制度を活用して、太陽光発電設備を購入し、太陽光電力を1kWh自家消費すると、設備の所有者は0.42人民元(7.1円)の補助金を受け取れる。一方、中国の電気料金単価はkWhあたり0.7人民元(11.9円)だ。したがって、太陽光発電設備を導入して自家消費すれば、電気代の削減額と補助金を合わせて1.12人民元、(19円)の価値が生まれる。
では、中国における太陽光発電設備の設置費用はいくらなのか。中国エネルギー研究会の李俊峰主任委員は、「太陽光発電の設備費は2013年でkWあたり1.4万~1.7万人民元(24~29.2万円)だった。それが2017年末には同7000~1万人民元(11.9~17.1万円)まで下がった。設備の容量にもよるが、5~10年で回収できる」と語る。
中国の太陽光発電設備の設置費用はkWあたり7000人民元(11.9万円)。日本の18~20万円と比べると、遥かに安い。一方、中国では、1kWh自家消費すれば19円の価値が生まれる。売電単価18円で全量売電する日本の発電事業者より発電量1kWhの価値はやや高い。もちろん発電した電力をすべて自家消費することはできないが、日本で全量売電するよりも太陽光発電の導入メリットは大きいようだ。実際、中国では、分散型の太陽光発電設備を導入して自家消費すると、初期費用を5年から10年で回収できるという。
価格低減で進んだ自家消費
この補助金は2013年に始まったが、開始当初はほとんど活用されなかった。それがここに来て利用が拡大した背景には、太陽光パネルメーカーによる価格低減の進展があった。
李主任委員は、「中国企業の技術が進歩し、設置効率が向上したため、コストダウンが進んだ」と分析する。
太陽光パネルメーカーの世界出荷量ランキングからも分かるように、2017年はトップ10にランクインしたメーカーのほとんどが中国勢だ。いまや中国メーカーの生産力、価格競争力は圧倒的で、中国メーカーの生産シェアは世界の85%を超えている。そして、2017年から、中国国内で太陽光発電設備の自家消費利用が進むと、メーカーは価格低減ともに性能の向上に力を入れるようになった。
実際、中国の太陽光パネルメーカーは、高効率製品の開発に力を注いでいる。屋根上の場合は、設置面積が限られるため、単位面積あたりの発電量の大きい変換効率の高い太陽光パネルが求められるからだ。
ロンジソーラーの李振国会長が、「単結晶の変換効率は高いので(単結晶を主力とする)当社の製品が伸びていく。量産できるパネルの変換効率は20.41%。2~3年で変換効率21%は達成できる」と意気込めば、インリー・グリーンエナジーの宋登元CTOは「生産量の拡大よりも技術と品質を重視した戦略で事業を行っている。両面発電の『PANDA』のパネル変換効率は20.5%だが、2年以内に23%に向上する」と展望を語る。また、無錫サンテックパワーの何双權社長は「高出力、高信頼性の生産技術において当社と順風グループは強みを活かすべく、2016年9月に新しいブランドをつくった。高効率製品をより良い水準で提供できるよう技術力を向上させていく」と述べる。
中国の太陽光発電市場は、まだまだ拡大の余地がある。メーカーの伸び代は大きい。