白熱のソーラーカーレース

2017年8月5日、『ソーラーカーレース鈴鹿』が鈴鹿サーキットで開催された。1992年から毎年開催されているこの催しは、国際自動車連盟公認の国際レースだ。太陽電池の搭載量など車両規則によって3つのクラスに分類されたソーラーカーが同時に走行。規定時間内での走行距離を競い、終了時に最も長い距離を走破したチームが優勝となる。大会のメインインベント、5時間耐久レースでは毎年白熱した戦いが繰り広げられる。

大阪産業大学は、過去22回出場し、計9回の3クラス総合優勝、2012年からは4連覇を果たした強豪チームだが、2016年は惜しくも連覇を逃した。今回は王座奪還に期待がかかる。

大阪産業大学のドライバーを務める三浦愛さんは大阪産業大学の卒業生だ。学生時代は三浦さんもチームの一員で、大阪産業大学のドライバー歴は今年で10年目。現在、三浦さんは現役のプロドライバーとして活躍している。三浦さんはレースに先立ち、「太陽光による発電が見込めないので、バッテリーの電力で戦うことになる。計画通りの電力消費で走ることを意識したい」と語った。

企業とともに開発

大阪産業大学のソーラーカーには、開発者のこだわりが随所にうかがえる。車体は軽いカーボンファイバーで、蓄電池は容量4.5kWhのミツバ製リチウムイオン蓄電池。太陽電池は、中国トリナ・ソーラーが高度なバックコンタクト技術を用いて製造したセル変換効率24.13%の超高性能タイプだ。ギリシャの公道で行われたレースでは、最高時速135㎞/hを記録したという。

チームアドバイザーを務める大阪産業大学の藤田久和講師は、「毎年1月頃から今年はどのようなウエハを使うか決め、トリナ・ソーラーと協議しながら試作を含めて何回か作ってもらった。そして本番に臨むという方法をとっている」と話す。トリナ・ソーラーの日本法人トリナ・ソーラー・ジャパンのチェン・イェ社長は、「大阪産業大学とは3年前から繋がってきた。研究室成果の応用や活用ができれば、大学と当社の両者にとってよくなっていくと思う」と語った。

チームの力で走る

当日はあいにく天候が悪く、太陽電池からの電力供給量はそれほど期待できない。蓄電池を活用した効率よい走行がカギだ。ピット内では過去のデータをもとにエネルギーマネジメントが行われる。

藤田講師は、「バッテリー容量を最後の5時間後にはゼロに持っていく。今は余裕のある状態だが、だんだんと曇るので、容量はぐっと落ちるだろう」との見込みを示した。

大阪産業大学のチームには学生やOBなど総勢27名が参加。レースでは、総勢27名が一丸となって戦う。様々なアクシデントが起こり、修復作業をしながら走行する車両もあったが、大阪産業大学は順調な走りを見せた。タイムロスにつながるドライバー交代のピットインでは、学生やOBが手早く作業を済ませた。このチームワークが代々、下級生たちに受け継がれてゆくのだ。

プロジェクト参加学生の一人、工学部交通機械工学科のメンデス・アンディさんは、「4回生のチームとしての活動力が格好いいと思う。初めて真面目なチームワークを見て感動した。自分も4回生になる頃にはスピーディに作業できるようになりたい」という。

苦戦するも、ベストを尽くした!

序盤はトップで順調な走りを見せた大阪産業大学。しかし周回数18周目で、バッテリー容量の多い『レッドゾーン』がスピードを上げ、追い抜かれてしまった。後半に差し掛かり、三浦愛さんから兄の純さんにドライバーチェンジ。走り終えた三浦さんは兄の純さんに思いを託す。

三浦さんは自らの走りを振り返り、「序盤は曇っており、例年よりペースを落としてスタートした。かなりゆっくりとした走行だったが、毎周ほぼ1~2秒以内の同じラップで周回できたので、電力の消費も理想値とほぼ変わらなかった。変にペースを乱すこともなく、ベストを尽くせた」との感想を語る。

そしてレース終了を示すチェッカーフラッグが振られた。レッドゾーンが周回数66周、大阪産業大学は64周だった。レッドゾーンとの差を縮められず、大阪産業大学はクラス優勝こそ果たしたものの、総合では2位の結果に終わった。

藤田講師は、「昨年に比べて太陽電池の変換効率や出力は格段に上がった。ただ、車両規則上、太陽電池を多く搭載した分バッテリーは少なくなった。今回は日射量が不安定で太陽電池を活かしたレースとならず、思うような結果に至らなかった」と分析。

王座奪還は叶わなかったが、ひと夏の熱いレースを終えたメンバーの表情は晴れ晴れとしていた。来年の活躍に期待したい。

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